「映画を早送りで観るなんてとんでもない」そう感じている人は少なくないはず。どうして彼らは映画を早送りで観ようとするのか。その理由を「時間の使い方」「価値観の変化」「コンテンツ消費」という視点から考えさせられる一冊です。
| タイトル | 映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形 |
| 著者 | 稲田豊史 |
| 出版社 | 光文社 |
読み始めた理由
著者の次の作品「本を読めなくなった人たち」を読み、作中でこの本に触れている箇所があった。。
私は映画は集中して見たいと思うが、娘子は映像作品を早送り、飛ばし見をしている。私には信じられないような行動だが、本人は気にしていないようだ。その心理を知る事が出来るのではと思い、読み始めた。
概要
本書では、倍速視聴やネタバレ視聴が広がった背景を、若者の価値観だけでなく、動画配信サービス、SNS、作品数の増加など多方面から分析しています。
こんな人におすすめ
- 映画やドラマをよく倍速で観る人
- 作品鑑賞の価値について考えたい人
- 近年(特に若者に強い傾向)の文化・価値観を理解したい人
- 映像作品に携わるひと
私のコメント
映画はゆっくり腰を据えて観るものである。私はそう考えて、積ん読ならぬ、「いつか観る映画」を動画サブスクのウォッチリストに積んでいる。
しかし、この本に描かれている人たちは別の理由をもって映画を早送りにして見ている。
お互いに言い分はあり、それを実施している。映画や動画を中心に、それぞれの立場を考える材料となる視野を広げてくれる一冊。
ネタバレ感想
映像の制作者と、視聴者の気持ちには齟齬がある。映画は等速でしかわからない細かな表現で作品を仕上げている。その表現を汲み取る事により共感し、より深く映画に感情移入することができる。
しかし、制作者があえて残した「余白」や「謎」が、視聴者にとっては不安になることもある。「今のはなんだったのか」「どうなってしまうのか」そんな不安を解消するために、あらすじを知ってから映画を観る。早送りで結末を確認してからもう一度見たければ等速で観る。
早送り見の中にはそんなスタイルもある。
なぜ不安を避ける思考方法になるのか。
それは、時間を無駄にしたくない、遠回りをしたくないという、日本の教育が背景にあるのではないか。
本書タイトルを見て第一印象は、「そんな、映画を早送りで見る人が増えているの?」という批判的な気持ちだった。しかし、本書を読み終える頃には、自分ではこなすことが無理だと思うような豊富なコンテンツに満ちたSNS社会を生き抜く人たちの術を讃えたくなる。
本書は「映画を早送りする人」を批判する本ではなく、変化する時代の中で、私たちがどのようにコンテンツと向き合うのかを考えさせてくれる一冊だった。

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